「しっかし、安心したぜ。再起不能じゃねえかって噂が学校中で立ってるくらいでさ。でも、まあ、元気そうで、ホントよかった。」
そう言って、美紀はローファーを脱ぎ捨て、パイプ椅子の上で胡坐をかいた。強がっているように見えて、実は美紀は乙女チックなところがあり、照れ隠しなのか、鼻をすすっているところを見ると、半泣きになっていることが窺える。
心配をかけまいとしていたことが仇となり、逆に心配をかけてしまっていたようだ。
「それで、聡くんはどこが悪いんだ?」
来た。訊かれるとは思っていたが、突然訊かれると、頭の中で反復練習した文句も、口ごもってしまい、喉の奥でつっかえてなかなか出てこない魚の骨だ。
「ま、まあちょっと風邪が長引いててな。」
おまけに咳き込む演技をするが、美紀は顔色を一つ変えず、動揺をしていない。
「そんなにひどい風邪なのか?」
「ああ、ちょっと肺が悪くってさ。」
良心の堤防が決壊して、嘘の濁流が止まらない。
「そうか……。」すると美紀はローファーを履かずに立ち上がり、それから俺に歩み寄って来て、
パンッ!!
平手打ち一発。



