「なあ、聡くん。体調はどうだ?」
「ああ、まあまあってところかな。」
「そうか……それならいい。」
恐れていたことが起こりつつある。会話が続かないのだ。お互いに気まずく、何を話せばいいのか、どんなことを訊けばいいのかわからない。
「美紀の方は元気なのか?」病人が何を言っているんだろうか、自分で言っておいてばかばかしく思うが、咄嗟に出たものはしょうがない。
「まあ、ボチボチだな。部活の方も本職の方も趣味の釣りも絶好調だぞ! ほら、こないだの休日に釣ったグレ(注:メジナのこと)だ。見てくれ!」
美紀に焦点が合わないほど近く、スマホを突きつけられ、まるで老眼が始まった初老のように、俺は首を後ろに下げながら見た。
立派な青黒く光ったグレと頬を擦り合わせる形で美紀が写っていた。
「どうだ? 聡くん!」
「ああ、いい感じだな。」
小学生並みの感想、略して小並感しか出てこない。自分のボキャブラリーの無さに、思わず今読んでいる本の作家に土下座して謝りたくなった。



