祭と別れ、俺は祭の忠告通り、部屋の掃除を始めた。
とは言っても、さっきの総回診の前に看護婦にあれこれ片付けられたものだから、そんなに汚れてもいない。
しかし、落ちていれば髪の毛一本でも気になるものだ。まして、それが髪の毛でなかったら尚更だ。
まあ、それくらい男の部屋には落ちているものだし、例え美紀がそれに気づいたとしても何も思わないだろうと思う。
多分……。いや、心配だ。
気休め程度に、スリッパを使って、床に落ちている髪の毛や埃をベッドの下へと押しやった。いくら美紀が潔癖だったとしても、人のベッドの下まで覗き込む真似はしないだろうし、したら俺はきっと美紀のことが嫌いになる。
ティッシュ箱の位置も重要だ。ベッドのすぐ横に置いてはならない。ちゃんと棚の上に置いて、取りやすくも取りにくくもある場所が無難だろう。
本も積み重ねているだけじゃなく、きちんと立てて並べておいた方がいい。今、読んでいる本は、ベッドに備え付けられている机の上に置く。裏返さないで、表向きで置いておく。そうすることで、もし美紀が気まずくなったときに、会話の糸口を引き出しやすいようにしておく。エチケットだ。
さあ、問題は、美紀とどう接するかだ。
心配をかけないように、なるべく明るく振る舞う。そして、病気のことは絶対に話さない。話をはぐらかして、平然とする。
嘘は得意な方だ。きっと大丈夫だろう。



