「吾田教授の総回診ですよー!」
その声で、病室に待機していた看護婦が一斉に病室のカーテンをシャーッと開けた。患者に断りもなくだ。
身勝手極まりない。
「吾田教授の総回診ですよー!」と今度は待機していた看護婦が患者一人一人に声をかけていく。俺を含めた4人部屋の患者たちがむくっと起き上がる。というか、電動ベッドのスイッチをいじられ、強制的にむくっと起き上がらせる。
身勝手極まりないにもほどがある。
そして、教授たちが病室に入って来て、ベッドを順番に回っていく。最初は伏見さんだった。
「おはようございます。顔色がよくなられましたね。」
伏見さんの顔色を覚えているのだろうか? 適当なことを言う。
傍に居た助教授らしき若い男が、カルテを横から取り出し、「ポリープ切除の術後、10日後です。」と説明をする。
「なるほど。体調の方はどうです?」
「いやあ、まあまあですな。」伏見さんは俺に接するときと同じように明るく返した。こういうところは大人だ。
「まあ、煙草の方もほどほどにしてくださいね?」
「ありゃ、こりゃ一本取られたな!」
思わず転げ落ちそうになった。あの人は、病室の見えるところに煙草を置いているのか……。アホだ。とても大人とは思えない。
「お大事に。」そう言って、教授たちは俺のベッドにやってきた。
いよいよだ。



