美咲さんはもしかしたら午後からでも来るんじゃないかという、淡い期待も虚しく、結局彼女は学校に来なかった。
下駄箱から靴を取り出して、はき替える。
「湖城くん、早く!美咲ん家行こう!」
ぐいっと僕の腕を引く桃華さんの手を、僕は振り払う。
怪訝そうな顔をする彼女から、目をそらす。
「………すみません、桃華さん。
僕は、美咲さんの家には行きません。
ですから…お一人で、お願いします。」
「……は???」
桃華さんは、明らかに怒っているだろう。
顔を上げなくても、声でわかる。
「湖城くん、それ、本気で言ってんの?」
「はい。」



