「『君』に用事はないよ。僕が用事あるのは『あいつの彼女』だから。
ちょっとね、あいつを苦しめる為に、君には痛い目見てほしくてね。
自分の彼女が敵に傷つけられる…。それは、どんな気持ちになるんだろうね……?」
そう言って口元に笑みを浮かべて、ズボンのポケットから取り出したのは…。
ナイフ……?!!
途端に戦慄が走る。
待って待って待って。あたし…殺されるわけ?
冗談じゃな……
「いやー、悪いね。僕らに協力してね」
そう言って、にこやかに、勢いよく振り上げられるナイフに、ギュッと目を瞑る。
こんなのって…!!
「桃華!!!!!!」
ああ、本当…あたしって馬鹿かも。
こんな時まで流星くんの声が聞こえるなんて…。
って。あれ、おかしい。
1秒後にはあたしを襲うはずの痛みはいつまで経ってもこずに、ただ戸惑ったような息遣いだけが聞こえる。
「…?」
恐る恐る目を開けると、最初に飛び込んできたのは、よく見た黒の髪。
それが、だんだん傾いて……ーー
「っ…」
次に映った紅が、目に焼き付いて離れない。
…嘘。うそ、うそ、うそ。
だって、こんな…っ、!
「流星くん……っ!!!!」



