結局、手を引かれるままに連れてこられたのは映画館で、流星くんはいかにも自身に似合わなさそうなラブストーリーものの券を2枚、買ってくれた。


「流星くんって、恋愛映画好きなの?」


ふと気になって、彼の顔を覗き込む。

男の子……しかも流星くんが恋愛映画好きなんて…ちょっと予想外だったから、びっくり。


だけど、彼はどうやら違ったらしくて。


「は?!違うから!これはあんたが…っ」

そこまで言いかけてから、しまったとでも言いたげに口をつぐむ流星くんに、少し自惚れてしまう。


まさかそんなこと、ないとは思うけど…



「流星くん、この映画、あたしが見たいと思って……?」

「っ!
だ、だったら、何だよ…!」


「〜〜〜っ」


え?なに??今デレ期なの??
流星くんってばツンデレだったの?


今のは卑怯でしょ……!


「流星くん」

「なに」

「大好き」

「……もう黙ってて、うっさいから」


なんかもう、流星くんのことわかってきたよあたし。

流星くん、今の照れ隠しでしょ?
だってほら、耳赤いの隠せてないよ。


あぁもう、本当好きだなぁ……。



「…っ」

愛しさが溢れて、つい手に力を込めてしまう。

だって、離してほしくない。今日くらいは。欲を言えば、これから先もずっと。

流星くんのそばにいたいと思うんだ。



だけど……本当、あたしって馬鹿なのかも。

だって、この時すぐに帰っていれば、あたしと流星くんの住む世界が違うってこと、ちゃんと理解していれば。






あんなことには、ならなかったかも知れないのに。