「あのねぇ!
あたしはあなたとお話したいからここに残ったんですー!!悪い?!」
ぐっ、と逃さないように腕を引いて、流星くんの顔を真正面から覗き込む。
「っ…、オレと晴は仕事が残ってる。さっさと帰れ」
僅かに頬を染めた流星くんが、私の手を引き剥がして、背を向けた。
ただ、それだけ。
たったそれだけなのに、心にトゲが刺さったように痛んで。
あーあ、あたしって意外に弱〜。
…でも。
「嫌よ。だってあたし、流星くんのこと好きになっちゃったんだもん。
でもあなたはあたしのこと、…多分、名前すらも知らないでしょ?
だから、少しでもあたしのこと、知ってもらいたいの」
走って、もう一度、腕を掴む。
そこには驚いたような…怒ったような表情の彼。
「それは…顔の話か?」
「はい?」
何、顔の話って。どういう意味?
「別に自慢でもなんでもないけど、この顔のせいで寄ってくる女が山ほどいんだよ」
忌々しそうに吐く流星くんに、なるほど、と納得する。
確かに彼はイケメンの部類に入る顔だし。
…そう考えると、あたしと彼はどこかで似ているのかもしれないな。



