耳を塞ぐ流星の横で、桃華が「やだー美咲知らなかったのー?!」とケラケラ笑う。
「いやいや、知るわけないでしょ、あんたらのグループ事情なんて…!」
「因みに今のトップはヤツだよ」
「うわマジか」
微笑を携える流星の言葉に驚きつつも、どこかで納得する。
確かにあいつは変人だけど、強かったし…思いやりだって、ちゃんとあったし。
ヤツがリーダーなら、あのグループも大丈夫でしょう。
「そっか…来て欲しかったんだけどね…」
ポツリとこぼすと、流星がニヤリと笑う。
「何?恋しい??」
「は?何言ってんの、バカじゃないの?!」
私はただ……っ、と抗議しようとしたところで、後ろから声がかかる。
「美咲さん、そろそろ行きましょうか」
「ん、わかった」
雪弥に連れられて、私はブーケを構える。
ーーこの数年。
高校を卒業して、大学に入って……って、目まぐるしく変わっていく私の心の中で、唯一つ、絶対に変わらなかったこと。
私は、雪弥のことが好き。
…それ以上に、言葉にすると恥ずかしいけど、愛してる。
誰かを好きになると人は変われるって言うけど、それは本当で。
私だけ見て欲しいって、必死になってヤキモチ妬いて、自分で自分が嫌になったり、すれ違いが起きたりもするけれど。
そういうの全部ひっくるめて恋で、そういうの全部含めて、女の子は可愛くなれるから。
『誰かを愛する気持ちを捨てないで』
そんな願いを込めて……
「いくよー!」
空へと投げる。
宙に弧を描くブーケが、陽の光を受けてキラキラと輝いた。
~fin.



