トッ、と一歩、雪弥に近づく。

それだけで、ちょっとだけ胸がドキドキして。


…今は夜だから、2人の距離を示す影は闇に隠れて。

でも、隣を見れば、すぐそこに、雪弥がいる。



「あの、美咲さん」


急に立ち止まって、雪弥がこちらを見た。


その目があまりに真剣で…思わず、息を飲む。



「………何?」


もしやまた例の『僕に近づかないでください…!』だろうか?
もう解決したのに???


真剣な顔で言われたことって、大体は私を遠ざける言葉だから、少し身構えてしまう。

…けど。



「長い間、お待たせして、すみません。」

「…?」


微笑む雪弥が、今回は違うって教えてくれる。



…じゃあ、今回は何の話???


首を傾げた私に、雪弥がはにかみながら、でも……


確かに告げたんだ。




「僕の気持ちは、今まで一度も変わったことなんてありませんでした。


僕は、今も変わらず、美咲さんのことが好きです。

…僕の彼女に、なってくれませんか?」



「………っ、


もう、遅いよバカ…!!!」




…このタイミングなんて、ずるい。

全然予想もできなかった。



「私を、雪弥の彼女にしてください…っ!」


笑いながら涙をこぼす私の雫を指先で拭って、雪弥は微笑む。


「夢みたいだ…。夢じゃ、ないですよね?」


「ばーか、夢な訳ないでしょ。
…夢だったら、私が困る。」


笑みを浮かべると、雪弥もそれに答えて。





晴れ渡った夜空の下、街灯に伸びる影が、重なった。