足が勝手に動き出そうとするけど、…まだ、ダメだ。

彼らの中ではまだきっと、勝負は終わってない。



ここで水を差すなんて真似は、絶対にしたくないから。





「本気でやれって言っただろ!!!!!」

雪弥の上に乗った流星が、雪弥の襟を思い切り掴む。

今にも泣きそうなその声に、心が痛んだ。



……そりゃあ、誰だって自分の憧れの人が負ける姿なんて、見たくないよ。

倒した相手が自分だったとしても、多少のためらいは生じる。


手を抜かれたんじゃないか、って思うよ。

…でも。
きっとあんたは、誰よりもわかってるんでしょ?

雪弥は、………




「僕は、今の自分の本気でやりました。それは…殴りあったあなたが、1番よくわかってるんじゃないですか?」


冷静な声で、雪弥が問うと、流星は「……でも、」と弱々しく手を離す。





「……大丈夫ですよ」


そんな流星に優しく微笑んで起き上がると、雪弥は制服についた汚れを払った。



「さっきのやり合いでわかったでしょう?
僕は…とても甘く、臆病な人間です。
それでも、リーダーを務めることができた。」

「でもそれは!辞めてから鈍ってるとか、

「違います」


即答して、雪弥は自分の拳を見つめる。


「長年一緒にやってきた仲ですし、わかっているんじゃないんですか?
僕は元々から闘い方がひどく甘い。

確かに、頭になるには強さも十分に必要です。
でも、それ以上に…優しくなくては、出来ません。

だから、流星くんならきっと出来ます。あなたはとても、優しい人だから…」