雪弥の胸ぐらを掴んで叫ぶと、雪弥は目を見開いて声すら出さなかった。

帰る途中の生徒が私達のことをチラチラと見ていて、ふと我にかえる。



「あっ、ご、ごめん、」

パッと雪弥から手を離し、慌てて校門傍まで移動する。


あー、ダメだ、ついつい熱くなっちゃう。…でも、もうこれ以上、ずるずる引きずってちゃいけないと思うんだ。

そろそろ、勇気出してみてもいいんじゃないの?



「ねぇ、雪弥。逃げてちゃダメだよ。このまま過去に囚われてるだけじゃ、雪弥もあたしも、進めない。
このままじゃ、なにも変わらないよ?自分から動かなきゃ、どーにもなんないじゃん…っ!」

俯いて、でもしっかりと告げる。


…まぁ、確かに最初は雪弥の過去を清算すればちゃんとした『彼女』になれるんじゃないか、って自分の不安を消すための行動でしかなかった。

でも、今は。


『雪弥の心を縛るものを解いてあげたいーー』

ただ、それだけなの。



「美咲さん…。すみません、僕は…臆病者だ、」


すっ、と一歩、雪弥が後ずさる。

「そんな…私がいるじゃん!私も一緒に行くから!」


だけど、雪弥は首を横に振るばかりで。


「僕は、また仲間に裏切られるのが、…たまらなく、怖いんです。だから、美咲さん、本当にすみません…、」

「待っ…雪弥!!!」



そのまま私の横をすり抜けて駆けていく雪弥に手を伸ばすけど、それはギリギリ届かず、宙を切る。





「そんな、…私、どうしたら……」




このままじゃダメ。
そんなことわかってる。

それに…裏切られたって、何?

晴の言ってることと雪弥の抱えている過去は、少し違う…?



「互いに、誤解しあってる、ってこと…?」




もう姿の見えなくなった雪弥に呟く。


私は、このこじれた仲をどうしたらいいんだろう。
何が正解なの?


頭にはモヤモヤばかりが残って。



それぞれに複雑な気持ちを抱えたまま、





夜は明けるーーー。