「…いいけど。何、下の名前で呼ぶ次は、ハグかなんか?」


…あれ、最後のお願い2回目な気がするんだけど。気のせい?気のせいじゃないよね?

まぁ、いいか。


頭の中で勝手に自己完結させて、晴をからかうように意地悪く尋ねると、「ああ、それもいいですね?」と爽やかに笑われた。


「……っ!」


くっそう。くっっそー!!歳下のくせになんなの!!



頬を膨らませて睨むと、そんな怒んないでくださいよー、とケラケラ笑われて、もう怒る気すら起こらない。

ほんと意味わかんないんだけど。


目の前の彼をじーっと見つめると、その目が不意に真剣なものになった。




「…美咲先輩。お願いです。
明日の17時。雪弥さんを、"倉庫"に来るように説得してくれませんか?
流星さんーー…現リーダーからの、頼みです。」


「……………」


雪弥が所属してた不良集団の、頭…。



そんな人が今更、雪弥に何の用だって言うんだろう?

気になるし…罠なんじゃないか、って過去の経験から脳が言ってる。



でも。


「わかった、説得…してみる。」

何もしないんじゃ、雪弥も晴も私も、誰1人として前に進めない。



「ありがとうございます」


晴が微笑んだその瞬間、5限の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。