ぐっと掴んだはずの手はいとも簡単に外されて、晴の手の内に収まる。



「大丈夫ですよ。」

ふわりと降ってきた優しい笑みに、ぐっと胸に色んな気持ちがつかえた。



「前にも、言いませんでしたか?あなたのことは、諦めますって。

それに、俺はそんなに弱くありません。…時間はかかるかもしれないけど、ちゃんと、前に進める。」


「…!」




うん、うん…そうだったね。忘れてた。

別に、フラれたからって次がないわけじゃなくて、晴はまた誰かを好きになれる。




「晴は、…強いね。」


私は、……雪弥にフラれても前を向けたのかな。




するりと晴の手を離すと、彼は一瞬目を見開いた後に、切なげに目を細めた…気がした。


「先輩!最後に一つだけ…お願いしてもいいですか?」



けど、今はもうにっこりと満面の笑みの晴。
…変わり身はえーな。


いや、もしやさっきの表情は私が見たまぼろし……いやいやそんなアホな。