私が力で敵わなかったヤツなんて、正直言って雪弥しか見たことなかった。
…それなのに、こいつは。
「私より力が強い人なんて、そうそういないもの」
「…先輩、本当に女ですか」
「うっ、うるっさいな!!」
茶化されて怒る私を見て晴はケタケタと笑って、それからーー…
真剣な、表情に戻った。
「でも…当たりです。」
「……………」
伏せられた彼の目が、一瞬悲しげに揺らいだ。
「あんたと雪弥のこと、聞いてもいい?」
「…………ええ。」
晴が頷いた瞬間に予鈴が鳴り響く。
「…先輩」
晴の声が、いつもより低く、鼓膜をくすぐる。
「何?」
「あの、今更なんですけど……先輩って、真面目ですか?」
答えは分かっている、とでも言いたげに薄く微笑む彼を見て、私も口角を上げた。
「まさか」
それを聞いた晴は満足げに微笑んで、校舎の壁にもたれかかった。
「…じゃあ、少し。お時間頂戴しますね。」
晴が僅かに曇りだした空を仰ぐのと同じタイミングで、私も校舎の壁にもたれかかって、そのまましゃがみ込む。
「俺と雪弥さんは、同じグループの仲間でした。」



