強い口調で言われて、言葉に詰まる。
雪弥は私を抱き締めたまま、耳元で告げた。
「全く、もう…。僕がどんな気持ちであなたと距離を置いたと思ってるんですか。
あなただけは、危険に晒したくなかったのに、そんなこと言われたら、耐えられるわけ、ないじゃないですか……」
「雪弥……」
ぎゅう、と雪弥の腕に、力が込められる。
…確かに雪弥は、いつも私の安全を考えてた。
どんな時だって、私を守ってくれて。
今までの冷たい態度だって、私を守るためだって…わかってるよ。
でも、でもね?
私は……
「身体の傷よりも、心の傷の方が痛かった…。
……想像してみてよ、雪弥。
もし突然、好きな人に冷たい態度をとられたら。
それが雪弥を守るためだって、わかっていても、辛いでしょ……?」
「……っ、……はい」
そう、だからね、雪弥。
全部1人で抱え込まないで。
辛い時は私を頼って。
「…っ、もう、私を遠ざけたりしないで…っ…」
「、はい…!」
ぎゅうっと、どちらからともなく強く抱き締め合う。
大好きで、手が届かなかったあなたが今、ここにいる。
それがどうしようもなく嬉しくて、幸せで、涙が一粒、雪弥の制服に染みを作った。
もう、絶対、離したりしない。
大好きな人の手を。
雪弥の肩越しに見えた空は、雲なんて一つもないくらい、青く澄んでいた。