【完】家出少女と、**王子。






「……あ」


「………」


なんで、今。


校舎の影になってたのかな。




全然……気づかなかった。







「………雪弥…」


「………なんですか?」



相変わらずの冷たい態度に、肩がビクリと跳ねる。



やばい…どうしよ。



「もしかして、聞いてた?今」


恐る恐る聞くと、雪弥は答えた。



「だったら、なんです?」


「っ」




……やだ、なんか、変な誤解とか、されてないかな。




「美咲さん、好意を寄せてくれてる人がいて、よかったじゃないですか。
別に、僕じゃなくてもーーー







「やだ。」






俯いて早口で言う雪弥に、きっぱりと告げる。



違うよ、そうじゃない。
好きでいてくれるなら誰でもいいなんて、そんなわけないじゃん。




「私は、雪弥に好きになってほしいの…!」


「!」




雪弥は、目を見開いて顔を上げた。


…やっと、こっち見たね。





「…13時。ステージの前に来て。

約束、だから」




なんだか、どんどん恥ずかしくなって、私は早口で呟く。


あー…違うのにな。



こんな誘い方じゃなくて、もっと、可愛くなりたい。








「……じゃあ、ね。そう言うことだから。」


最後まで可愛くないな、私。



自分で自分を叱りつつ、私は教室まで振り返らずに、まっすぐ帰った。