「えっ…?!」
至近距離で、矢嶋くんの驚く声が聞こえて、腕が一瞬緩んだ。
その隙に彼の胸を押して、少し距離をとる。
「…本当、ですか。先輩」
大きく目を見開いた矢嶋くんに、ふ、と笑みがこぼれた。
自分で言っといて、なんで驚いてんのよ。変なヤツ。
「本当。別に付き合ってもいいけど…」
ニコリと微笑んだ後、真剣な顔で彼を見つめる。
「心は、あげないよ…?」
「…っ、」
ーそう、私は別に、こいつと付き合う形になったって、構わない。
雪弥のことを想う気持ちは、絶対に変わらない自信があるから。
「……っ…そりゃないですよ、先輩…」
弱々しく笑う矢嶋くんに、ズキリと胸が痛んだ。
「…ごめん、」
ぽつりとこぼすと、矢嶋くんは目を見開いて、一瞬俯いた後、またいつもの笑顔に戻る。
「…先輩ったら、本当に、一番残酷なフり方しますよね〜!上げてから落とすスタイルでフラれたのは初めてですよ。
…まぁ、その方がボクとしては嬉しいですけどー」
「…………………………」



