矢嶋くんの言葉が、グサリと胸に刺さる。
「なんで、知ってんのよ。」
「さぁ?どうしてでしょう?」
「なんなのよ、それ……」
本当、つくづく腹の立つ奴。
そう思って矢嶋くんを見ると、真剣な瞳と目があった。
「……っ」
バクバクと、心臓が走り始める。
矢嶋くんが、形のいい唇を開く。
「ーー先輩。
ボクでいいじゃないですか。美咲先輩のこと好きでもない奴に、先輩のこと渡したくないです。」
「な……」
やばい。なんで。私はこいつのこと、なんとも思ってないのに。
…絶対、顔赤い。
咄嗟に俯くと、矢嶋くんは壁ドンを解いて、ぎゅうと私のことを抱きしめた。
「えっ、ちょっ…矢嶋く…っ
「先輩、湖城先輩なんかやめて、ボクにしましょうよ。
…ボクと、付き合ってください」
「……っ…」
【付き合う】
その言葉が、ズシンと乗っかる。
…桃華。あんたの言ってたこと、本当だね。
「いいよ、付き合っても」



