ダメだ、ダメだよ私。
早くここから離れなくちゃ……。
そう思うのに、足が思うように動いてくれなくて、私は2人にバレないように息を潜めるだけ。
「ねぇ、湖城くん。」
「ーーなんでしょう?」
ドッ…。と心臓が嫌な音を立てた。
え、雪弥、私以外には普通に接してんじゃん……。
そんなショック状態の私に、その女の子は追い討ちをかけた。
「湖城くん…。単刀直入に言うけどさ。
あたしと……、あたしと、付き合ってよ。」
「!!!」
ドキドキと、心拍が上がる。
「あたし、ずっと湖城くんのこと好きだったんだぁ。
やっとあの不釣り合いな女の子とも別れたみたいだしさ!
それに…あたしを彼女にしとくと、自慢、できるよ…??」
「………………………………」
待って。なんで雪弥、なにも答えないの。まさか…悩んでるの?
確かに、私じゃ雪弥には釣り合わないよ。可愛さのかけらもないどころか、暴力女だし。
それに私はもう雪弥の彼女じゃない。
そんなのわかってるよ、でも、でもそれって、
………あんまりじゃん……。
心拍数が上がりすぎて、胸が苦しい。
息が上手く吸えない。
痛い。痛い。
心臓から血が流れ出てるみたいに…
「…っ……痛い…」
私は零れ落ちそうな涙を拭って、いつの間にか座り込んでいた足に力を入れて、見つからないように校舎裏から立ち去った。



