「で?さっきは教室で何があったんですか〜?(笑)」
…ねえ桃華さん。それ、笑い隠せてないですけど……?
「だから何もなかったんだってば。その、…む、虫が、出ただけ。」
「いっつもGが出たら男子よりも早く対応してるくせに??」
「……………」
私が黙ってしまったのを見て、桃華は意地悪く微笑んだ。
桃華、顔!顔!!お姫様どころか魔女みたいになってるよ?!!!?!
「ほ、ほんとに、桃華が気にすることじゃないんだって。」
それでも尚話そうとしない私に、桃華はその綺麗な眉を下げる。
「でも、あたしだけじゃなくて、湖城くんも気になってたみたいよ?」
「…雪弥が?」
「うん。美咲が悲鳴あげた瞬間、教室に突っ込んでいきそうな勢いでさ。
あたし、止めるの苦労したんだから〜」
……そう、なんだ。
もう脈ないって思ってたから、ちょっと嬉しい…かも?
表情筋に力を入れようと試みるも、どうしてもにやけてしまう。
ヤバ、私ってこんな素直だったっけ…!?
「で、何があったの?あの男の子じゃ、美咲をビビらすなんてこと、出来っこないよねぇ……」
んー….と考え始めた桃華に、私はぽつりと言葉を落とした。
「…別に。急に耳元で話されたから、ビックリしただけだよ。」
それを聞いて、桃華は驚いたような、面白いものを発見したような、そんな表情をつくる。
「えー?!!!美咲って耳弱かったの!?ぜんっぜん知らなかった!!!!」
「は、…はッ?!///な、何言って、てか別に弱いわけじゃ「ーーホントに?」
私の言葉を遮って、桃華は耳元に口を寄せ、囁く。
「ひっ?!」
ビク、と肩をならした私に、桃華はおもしろ〜い!と笑う。
「美咲の弱点みーっけ!」
「も、桃華!!!」
きゃー!と逃げる桃華を、拳を持ち上げて追いかける。
「捕まえた!」
「きゃ〜、捕まっちゃった〜!笑笑」
その後は、2人並んで、茜からコバルトブルーへと変わっていく、まだ暑さの残る、秋の空を見上げた。



