フッ、と耳に息がかかる。
ゾワッとした感覚が背中を通り抜けて、背筋がピンと伸びた。
「っギャアアア!!???」
ワンテンポ遅れて叫んだ私に、矢嶋くんはケラケラと笑う。
「美咲先輩のそーいう面白いとこ、お…ボク、大好きですよ。
では、また明日♡」
「っっ!だっ、誰が美咲先輩じゃーー!
あと私は別に面白くなーいっ!!!!」
ヒラヒラと手を振って教室を出て行く矢嶋くんの背中に叫ぶと、彼と入れ替わりに入ってきた2人に白い目で見られる。
「大丈夫、美咲?廊下まで叫び声聞こえてたけど。なんかあったの??」
「べっ、別に!!/////」
「顔、真っ赤なのに?」
「そ、それは…っ……」
それきり黙ってしまった私に、桃華はニヤ、と微笑み、鞄を手に取った。
「今日は、一緒に帰るよね?」
「……ハイ。」
私も慌てて鞄を掴み、教室の扉を開けた桃華の後を追う。
「またね、湖城くん。」
「…じゃ、じゃあね、雪弥!」
振り向きざまに手を振ると、雪弥は微笑んで手を振り返してくれた……
ような気がした。



