「………………」


ーー絶句。
それ以外に今の状況を説明する言葉はないかもってくらい、この言葉がぴったりくる。



と、とりあえず、彼と話をしないと。



「あの、矢嶋くん。」

「晴でいいですよ。」


「……矢嶋くん。今日は何の用で?」


流石に、雪弥以外を下の名前で呼ぶなんてことはできない。


矢嶋くんは「ちぇ、名前、呼んでもらえると思ったのに。」と肩を竦めた後、私の机に手をついた。




「あいつに取られる前に、先手を打っておこうと思ってですね。」

「…は?」


あいつ…っていうのは多分、雪弥のことだよね。でも先手って?なんの話?




「文化祭、ボクとまわっていただけませんか?」



…………………




んーーーーーーーーー。そうきたか。

でもこれって、断ったら断ったでこいつのドMが炸裂するだけだし、受けても単純に喜ばれるんでしょ?


じゃあどっちにしてもこのドM男を喜ばせて終わるじゃん。
それは嫌だ、すっごいやだ。なんか癪!



んー、どうしよう。


だけどバカな私にはそれ以外の方法は思いつかなくて。


「……桃華とまわるし。」

言えば、やっぱり矢嶋くんはニッコー、と笑った。


「バッサリ断ってくれるところが本当、ステキですよねー!
あ、でも…」


ぐいっ、と体が動いたかと思うと、私の耳は、矢嶋くんの口元まで移動していた。


「2日目、少しだけ時間空けといてくださいね…?」