「これは去年のだから、一つ上の先輩達だね〜」



ニコニコしてスマホをスカートにしまう桃華に、私は思わず冷たい目。



「イヤよ。なんでこんな小っ恥ずかしいモンに出なきゃなんないのよ!?
てか去年って桃華、私とまわってたからステージ行ってないよね?!誰からもらったの、この動画!???」


「えー?なんかね、『告白大会見たかったなぁ…』って独り言呟いたら、見知らぬ男の先輩がくれた!」



え、…



怖っわ!この子怖っわ!!!!
個人情報もクソもねえ!




もう私はドン引き。

だけど、そんなこと知らないとでも言うようにずずいっ、と詰め寄られる。




「とにかく!出てよ、コレ!!!」


「な、なんで!「湖城くんと上手くいって欲しいからっ!!!!」



桃華の至近距離での真剣な眼差しに、私はぐっと息を呑んだ。



桃華は、本気で勧めてくれてるんだ…。




「ーーわかった。…………あ、」



ついポロッとこぼしてしまって、慌てて手で口を押さえても、もう遅い。

口から出た言葉は、どれだけ必死に息を吸っても、再び口の中に戻ってくるはずもなく。(吸ってないけどね)



桃華の顔がパァッと輝いた瞬間、私は本気で、『終わった……』って思った。



「言ったね!?言ったね??!!」

「い、いや、今のは違…「ん?」


満面の笑みで覗き込まれ、私の脳が"危険だ!"と信号を出す。


ブラック桃華が!ブラック桃華が降臨してる!!



「あ、あの、その……」

それでもなんとか取り消しを試みるけど、言葉がうまく紡げない。



そんな私に、桃華はにっこりと微笑む。


「ま、ムリって言っても?無理矢理にでも出させてたけどね♡」









……マジで終わった、私の文化祭……。