説明するって言ってるそばからスマホって…。
桃華の考えることは、やっぱりよくわからない。
「まあまあまあ!これ見ればわかるって!」
スッと横向きに差し出されたスマホを、覗き込む。
「なにこれ…動画?」
再生ボタンを押されたそれを、眺めること数秒。
パッ、と映ったのはこの学校のステージ。
それと、相当な数の生徒。
しばらくすると、
「エントリーナンバー1番!2年D組の中嶋 春樹 くんでーす!!」
という司会の女の子の声と、拍手と歓声と共に、1人の割とカッコいい感じの男子がステージに上がってきた。
手にマイクを持ち、すっと息を吸う。
「…?」
なに、歌うま大会でもすんの?
そう、思った矢先。
『2年C組の 蜷川 夏菜さん!初めて会話した時から、ずっといいなって思ってました!
俺と付き合ってください!!!!』
その瞬間、「キャー!夏菜っ!!」と端っこの方から女の子達の歓声が上がる。
……こ、これは。
軽くフリーズしている間にも、動画は進んでいく。
顔を赤くして俯く女の子が、ステージに上がってきた。彼女が『蜷川 夏菜』さんかな?
司会の女の子からマイクを受け取り、モジモジとしたのち、マイク越しでも聞き取りにくい程の小音量で、
「わ、わたしでよければ、是非…っ!」
と応える。
割れんばかりの拍手と歓声の途中で、動画は終わっていた。
「こ、これはもしや…」
スマホを桃華の手に返しつつ、私は恐る恐る彼女の顔を覗き込む。
すると桃華は、ドヤァッ!とでも言いそうな勢いで、笑みを浮かべる。
「そ!文化祭のメインイベント!告白大会でーすっ!!!」
やっっぱりね!絶対そうだと思った!



