【完】家出少女と、**王子。





ドッ……と心臓が大きく鳴る。


期待していた分のダメージはあまりにも大きくて、一瞬だけ視界が暗くなった。





………だけど。

やっと雪弥と話せたんだ、このまま帰すつもりなんてさらさらない。


もう帰りかけていた雪弥の背中に向かって、声をかける。






「……じゃあ、本当に、付き合ってみる……….???」




震える声を、強気な態度で誤魔化す。





「何、言ってるんですか……?」


「〜〜だって!私は……



私は、雪弥のこと、本当に好きになっちゃったから!!
だから…本当の、彼氏彼女になりたい…!」





雪弥はバッとこちらに振り返った。

けど、また目を伏せる。




「僕はーーー……」



ドッドッドッ、と速まる鼓動に、ギュッと目を瞑る。



…沈黙が怖いなんて、初めてだ。


雪弥は今どんな気持ち?なんて答えるんだろう?




…わからない。わからないから、怖い。





下を向いていた雪弥が、顔を上げる。
私を見つめる。

雪弥の目に、私が映ってる。



「ーーー……」

雪弥が口を開いた、その時。






キーンコーンカーンコーン……



「「…!!!」」



まるで我に返ったかのように、雪弥はハッとして、「すみません…っ」と言って、走って帰って行った。



私は当然、ぽつんと一人、取り残される。


……雪弥の気持ち、聞けると思ったのに。
取り残された私は、授業5分前を指す時計を、キッと睨みつける。










「〜〜チャイムのばっかやろー!!!」