【柚子side】



「俺、お前が好きだ。彼女になれよ」



まだ水気が残る手をブンブン振る。


ハンカチなんて持ち合わせて無い様な女の子だ。


なのに目の前には、キレイな金髪に吸い込まれそうなグリーンの瞳。


すごく整った顔立ちの男の子が。


ハーフ…かな?


カッコイイ………。



じゃなくて‼︎


初対面の上、ここ女子トイレの前だから‼︎



「彼女になってくれんの?」

「…はっ⁉︎彼女⁉︎」

「うん」


どうしよう。


あたしの情報処理能力が間に合ってない‼︎


「あの…初対面、だよね?」

「一目惚れした。ついさっき」


つ、ついさっき〜⁉︎


あたし意味分からんよ……。


「じゃあ、今日から俺の彼女な。放課後、玄関で待ってるから」

「ええっ⁉︎ご、ごめんなさい‼︎」


体育の評価2のあたしが、廊下を猛ダッシュ‼︎


逃げるしかなくない⁉︎


絶対、からかわれてるだけじゃん‼︎



高校2年生の春。


早速、何かに巻き込まれちゃった。