さて授業が始まりました。



「うぅ……」



ただいま、後ろの席から何やらすごい圧を感じるのは気のせいだと思わなくては、授業に集中出来そうにないという状態です。


なんで私がこんなことに……。


面倒なことになったなぁ、と頭を下げるとクイッと髪の毛を引っ張られた。


「った」



引っ張られたのは、後ろから。


ということは、そこにいるのは彼しかいない。


始めは痛みに耐えていた私だが、いつまでたっても引っ張るのをやめない竜門くんにムカついてきた。


やい竜門くん、私の髪を引っ張て抜けてしまったらどうするのだ。


我が家の家系はハゲが多いから、私だって禿げてしまう可能性がある。


だから、髪は大事にしているのだ。


女だから禿げないという確証はないもん!


竜門くんを恐れ多いなんて考えていたのを忘れて、勢いよく振り返った。



「竜門くんっ」



呼べば合わさる視線。


まっすぐにこちらを見つめる瞳に引き寄せられて、一瞬言葉をなくす。


その瞬間を彼は突いてきた。



「お前の天パ、犬みたいだな」


「ヒッ……」


「あ?」



振り返った途端に私の髪をふわっとすくった彼の手に驚いて、つい怯えた声が出てしまった。