か、かわいい……!



「竜門くん好きです!」


「それもう聞いた。知ってる」


「でも言わせて! 竜門くん好き!」


「うるさい黙れ」



まだ数学の時間だと言うのに惚気まくる私たちに、クラスメイトはゲラゲラと笑う。


なんだか夫婦漫才のようだとどこからか声が飛んできたり。


へへへ、と笑って私も椅子に座った。


微笑ましげに見ていてくれた先生の目が、だんだん怖くなっている気がしたからだ。


先生、授業妨害してごめんなさい。


席に着くと、芹ちゃんからお祝いの連絡が入っていた。


それから「今日の帰りに一緒に帰る約束しておいたら?」とのアドバイスが。


なるほど、さすが芹ちゃん。



〝 竜門くん、今日一緒に帰りませんか 〟



ノートの切れ端に書いた文字を、後ろに投げると、すぐに返事が来た。



〝 いいけど。竜門くん呼びやめろ 〟


〝 じゃあ竜くん? 〟



確か竜門くんの友達が、竜、って呼んでたよね。


そう思ってそれを送れば予想外の返事が来て、顔が赤くなった。



〝 お前が呼ぶ名前なら、それだけで特別だから何でもいい 〟


ちらりと後ろを見ると、彼と目が合った。


逸らされるだろうと思ったのに、照れたように目を細めて彼が笑うから。


私はまた彼の笑顔の虜になってしまった。




私、吉野花は、素敵な笑顔を見せてくれる竜門くんが、大好きです。




fin.