竜門くんと数学のお時間





隠しきれていない赤い耳を見せながら、そんな風に言うのはなんで?


なんで耳赤いの?


飼う? 飼うって何?


私わからないよ、飼うってどういうこと?


今までだって、竜門くんだけの犬でいたわけだから、飼われていたようなものじゃない。



「……私、飼われたくないよ!」



出てきそうな涙を閉じ込めようとしても、声が、目が、にじむ。


目前の竜門くんが動揺したのが、わかった。



「……え」


「犬じゃなくて、女の子な私で竜門くんといたいんだって言ってるじゃん…!」



涙が、こぼれる。


これは彼がわかってくれない悔しさからか。


好きだからこそ、彼の前では女の子でいたいのだ。


なんでこんなにちっぽけなことにこだわっているのだろう。


それはもう、自分でもわからないくらいの、強いこだわりだった。



「………ばぁか」



しばらくして竜門くんに頭を触られた。


優しい大きな手が、私の髪で遊ぶ。



「さっきの、言葉のあやなのに」


「飼ってやってもいい、ってやつ?」


「そう」



言われたことを、ぐるぐる考えてみる。


飼ってやってもいい、が言葉のあや?


何が言いたいのかわからない。



「ごめんなさい、わからないです」



仕方なくそう言うと、竜門くんは小さく息を吐いて「……ちゃんと言わなきゃか」とつぶやいた。