面白そうに口角を上げて笑う彼、竜門(りゅうもん)くんにゾクリとした。
「次のテストまで、楽しませろよな」
そう言って席の方へ歩いていく竜門くん。
楽しませろ、ってどういうこと……。
「花、だいじょぶ?」
固まってしまった私の肩を芹ちゃんが揺らす。
「あちゃー大丈夫そうにないな」
うん、もちろん大丈夫じゃない。
状況についてこれてない。
「でも竜門くん、なんで花に話しかけてきたんだろ」
ほんと、なんでだろ。
イケメンが集まるA組男子には、特にこれといった関わりを持ったことがない。
ましてや、竜門くんのような人気者に関わることすら恐れ多いのに。
しかも彼、どっかの有名な財閥の御曹司みたいだし。
さっきの会話だって、初めてなのに。
……と思っていたら。
「おい、吉野花」
「………ハイ」
「お前の席、ここ」
「………え」
私、どうやら竜門くんの前の席のようです。