「……なんで竜門くんなんだろう」



落ち着いたと同時に湧き上がってきた疑問が思わず口を出た。



「花?」


「よく考えれば御曹司と恋するのは難しいのに、て思って」


「んーそれは私も思ってた。でもまだ高校生だし、結婚を前提に付き合うわけじゃないんだからいいんじゃない?」


「あーなるほど、そっかー……」



確かに結婚を前提に付き合うわけではないし、付き合ってさえいないけれど。


だけど、いつの恋でも大切にしたい。


だったら、なんでお金持ちのお坊ちゃんなんて好きになったのかな……。


お金持ちはお金持ちと結婚することが決まっていて許嫁がいたりするのに。



「ま、好きになろうと決めて好きになるわけじゃないしさ」


「……うん」


「恋しようと思って恋出来るものじゃないし」


「うん、そうだね」



芹ちゃんの優しい声がストンと落ちてくる。


そうだよね。


嫌われたのかもしれないと弱気になっている今、彼が御曹司だからと理由付けして諦めようとしているのは格好悪い。



「好きになった人がたまたま御曹司だっただけでしょ」



そう、たまたま御曹司だっただけ。


それに、どうせ諦められないしね。



「花、頑張れ」



芹ちゃんが強い瞳でそう言って、それから目を細めた。



「端から見てるとワンチャンあるように見えるから、自信持って」