「それを言うために俺に会いたかったわけか」
少しの沈黙の後、竜門くんがポツリと言った。
その声がなぜかいつも以上に低くて、何かを察知した私は早口で話し始めていた。
「あ、でもでも、竜門くんに会いたかった理由はそれだけではないんだよ!」
好きな人には、自然と会いたくなるものじゃない。
「竜門くん、私ね、」
「卒業したければ勝手にしろよ」
話し始めた私を遮って、竜門くんは切り捨てるようにその言葉を吐いて立ち上がった。
怒っているような口調に、私は慌てた。
何か悪いこと言ったかな。
わからない。
「待って! 私、怒らせるようなこと言った…?」
教室の扉から出て行こうとする竜門くんは、私の声に足を一度止めた。
「わからないなら別にいい」
こちらを向かず廊下を向いたまま、静かに竜門くんは出て行った。
1人、特Eに残された私は呆然としていた。
何が悪かったのだろう。
犬を卒業すると宣言したことが悪かったのだろうか。
だって、その話をするまで竜門くんはいつも通りだった。
だけど、犬をやめたいのは竜門くんの彼女になるための大事な一歩なのに。
私は所詮、犬がいいということなの?
「竜門くんのことがわかんないよ……」
膝を抱えた私は、もしかしたら嫌われたのかもしれないと考えてしまい、嗚咽を漏らしながら泣いた。