「ただいま」

家に帰ると、在花の頭にキノコが生えていた。

わかりやすく病んでいるのだ。

ちなみにこのキノコはもちろん食べられないし、生えてもない。

キノコの被り物だ。

わかりやすく言えば、在花の趣味だ。



「あ、めんどくさいことになってる」

そんな在花を見て、わかりやすくウンザリしてみた。


「そうなんだよ」


リビングのソファに寝転がっている琥珀が返事する。

在花がこんな風になったからと言って、本当に一大事になってたことは1度もない。


だいたい、キノコなんてかぶるような余裕があるっていうことはそれほど緊急じゃないってことだ。


「何があったの…」


このサインは聞いてほしいってことだから…聞かないと怒るという面倒くささ。

1人でソファを陣取る琥珀の足を蹴って、琥珀を座らせて私もソファに座った。


在花は小刻みに震えながら、体をこっちに向けた。


「理仁、絶対浮気してるから」


どこかで聞いたような怪談話風のしゃべり方。

なんか変な人形を握りしめてるし…怖。


私と琥珀が顔を見合わせて、


「いや、いや。ありえないでしょ」

私と琥珀が笑うと、

「ほんとなの!本当にそうなの」

在花は真剣な顔で言い切った。


そんな在花の剣幕に押されながら、

「な、なんでそう思うの?」

この質問を待っていたかのように、在花はのっそりと起き上がり、

「見たの、女の子といるのを。腕組んで歩いてた」

そう言って、しくしく泣き出したので、琥珀と目を合わせてため息をついた。