「おはよ…」

のそっとキッチンを覗くと、母が卵焼きを作っている。

私の視線に気づいて母がこっちを向いた。


「あ、おはよ」

「母さん、髪の毛ボッサボサじゃないの」

母の髪はまるで芸術作品のように四方八方へと跳ね上がり、フライパンを揺するたびにその跳ね上がった雑草たちがフワフワと揺れるのだ。


この人は、本当に家だとこんなだらしないけど外に出ればこの辺りではけっこう有名なオシャレな海外インテリアのお店の店長なのだ。

働いている姿は、本当に尊敬できるぐらいかっこいい。

母はあの細腕で、私達を育ててくれている。

私は父を知らない。

琥珀がまだ赤ちゃんの時に離婚したみたいで写真もない。


ただ、在花も琥珀も母に似ているけど、私だけ顔が違う。


父に似ているのだろうと、誰も何も言わないけどそう感じている。