ノラネコだって、夢くらいみる

 その日の夜は、お母さんが生前私のために作ってくれたという、アルバムを眺めた。

 お腹が大きいお母さん。

 準備してくれた、よだれかけや手作りの洋服。

 産まれたばかりの、小さな私。………目がギョっとしていて、小猿みたい。

 ちっちゃなちっちゃな手で、お母さんの指を握っている。

 アルバムをめくっていくと、

『鈴ちゃんが、初めて寝返りをしたよ』
『夜泣きが続くね。悲しいのかな?』
『鈴ちゃんに、歯がはえてきました』

 そんなメッセージとともに、写真が並んでいる。

 お母さんからのメッセージは、ある日をさかいに、ピタリととまっていた。

 そこからは、字がかわっている。おばあちゃんの字だ……。

『ばーば、と呼んでくれました』
『鈴は、女の子なのに、男の子と間違えられるくらいに、おてんばです』

 ……ウソでしょ!?私、おてんばだったの?

 今の私から、想像できないや。

 アルバムを全て眺め終わった頃には、朝になっていた。