ボロボロになりかけた小さな心が、大きく柔らかいもので包まれていく。

「なにより、おじいさんおばあさんは、お前のことを想って下さっているだろ。そういう人たちを大切にしてけばいい。愚民相手に気を揉むなんて、バカげてる」

「………愚民って」

「俺の大切な黒猫を、こんなにも傷つけた百瀬茉由には、それなりに痛い目見てもらうとしよう」

 そう言って、私の頰を伝う透明な液体を、手でぬぐう逢阪。

「ちょっと、逢阪っ……」

「涙を流すと、心が浄化される気がしないか?」

「え?」

「友達の前で平静を保つの、しんどかったろ」

「………!」

「俺の前では泣けばいい。何の気も使うな」

「っ………」

 〝大事な黒猫〟って、どういう意味?

 私は逢阪のとこのタレントだから大切って意味?

 大切なタレントになら、こんなこと、平気でするの?

 こんな優しいこと、言っちゃうの?

「触らないで」

 逢阪の手を振り払う。
 
「ってか、モモに何する気?」
 
「ガキが調子に乗るとどうなるか思い知らせてやる」

「逢阪…」

「社長、が抜けてる」

 今のあなた、どっからどう見ても、ヤクザかマフィアなのですが。