高広は一旦言葉を切った後、僅かに眼を細めてから私をそっと引き寄せた。

吸い込まれるようにそこに収まってしまったのは何故なのか、私は分からないまま彼の体温を感じた。

高広が囁くように続ける。

「ケーニィの家で再会した時に俺、自分でも驚いたんだ。お前と付き合ってた頃は気を使ってて、素の自分なんて当分出せそうにもなくて、正直しんどかった。なのに久し振りに会ったお前はあの頃のお前じゃないみたいですぐにまた顔が見たくなって、話したくなって。それに」

そこまで言った高広は、少し身を起こして私の瞳を覗き込むと、掠れた声でこう告げた。

「それに……ケーニィの家にお前がいて……妬けたんだ」

妬け……た?

「最初はなんで気分悪いのか分からなかったよ。けど帰りながらすぐ分かった。俺は嫉妬してるって。妬く資格なんてないのに、妬けたんだ」

至近距離から見つめられると苦しくて、私は眼をそらすと彼の腕の中でもがいた。

「なあ、真優」

どうしよう、どうしよう。

「そんなこと言われても……困るよ」

すると高広は小さく息をついてからゆっくりと私から離れた。

「今日は帰るから……また返事きかせて」

御馳走様、と言って帰っていった高広の背中を、私は見つめる事しか出来なかった。