「ありがと」

なに、その顔は。

切り込んだような二重の眼をわずかに伏せた高広に、私は不覚にもキュンとしてしまった。

高広といい篠宮さんといい、やっぱりイケメンは女心をくすぐる生き物なんだな。

「マジで美味い。幸せ」

私はマジマジと高広の食べっぷりを見つめていたけれど、何だか嬉しくなって口を開いた。

「なんか、嬉しい。こっちこそありがと」

「え」

「だって、料理を美味しそうに食べてもらった経験なかったし」

「……」

「……」

お互いに無言になって視線が絡んだ後、高広がゆっくりとお箸を置いた。

「真優、俺ともう一度付き合ってくれないか」

「え?」

食器を洗おうと立ち上がったばかりの私は、足を進めることを忘れて硬直した。

高広は立ち上がると私の真正面まで来て真っ直ぐにこちらを見つめた。

「正直な気持ちを言うと、付き合ってた頃はお前の良さが分かってなかった。忙しくて時間が合わなかったし、お互いを知る時間もないまま連絡途絶えたし」