「自分でしたんじゃないよっ!されたんです!」

すると南ちゃんは財布を手にしながらニヤリと笑った。

「面白くなりそうね。これからどーなるか、逐一報告してね」

「楽しむの?!私のこの状況を!」

ワクワクするといった風に私の瞳を覗き込む南ちゃんに呆れながら、ハアとため息をついた。

あの靴……。

お気に入りだったハイヒールが……。

ダメだ。

今月はもう、大好きなブランド『YUMEKI』のハイヒールを買えるだけのお金がない。

かといって、あの篠宮慶太が私のハイヒールを預かってくれているわけもないだろうし。

たとえ預かってくれていたとしても、あんな事がありながらノコノコ取りに行けないし。

「あああっ!」

モヤモヤの挙げ句イライラして低く叫んだ私を、隣の席の男性客が張り付いたように見てきたけれど、どうでもよかった。

「悩ましい声出さないでよ。隣の客が欲情するわよ」

「南ちゃん、笑えない。私の靴ぅ……」

店を出て社に帰りながらも、私の溜め息はやむことがなかった。