あなたにspark joy

運命なんじゃないだろうか。だから彼女とキスがしたいんじゃないだろうか。

それに、彼女も……。

許されると思ったんだ。多分、彼女も同じ気持ちだって。

結果は惨敗で、俺は生まれて初めて女に殴られた。

しかも、何が入っていたか分からないが、ぎっしりとつまった重量級のバッグで。

「ばかーっ!」

思いきり叫んで身を翻した彼女の背後で、ハイヒールが弧を描いて宙に飛んだ。

「おい、靴……」

脱兎のごとく走り去った彼女に呆気にとられて俺は立ち尽くした。

「両方脱げてるし……」

痛くないのかな、足の裏。

しかし、物凄い綺麗なフォームだったが……陸上部かよ。

俺は堪えきれずに笑い出した。

この靴は……そう簡単に返したくない。

俺は噴水から出ると、笑いが収まらないまま彼女のハイヒールを拾い上げた。

***

恋人を作るのは、昔から難しくなかった。

学生時代も、起業してからも。

けれどいつも上手くいかなかった。