「真優が好きだ」

……高広……。

私の髪に顔を埋めた高広の息が首筋にかかって、私は動けずに彼の声を聞いた。

「前も言ったけど、もう一度俺と付き合ってくれないか。返事が欲しい。今」

……何となく、今日再びこう言われる予感はしていた。

篠宮さんへの気持ちを諦めて、高広に目を向けようと思ったのも事実だ。

だから今日、高広の誘いを断らなかった。

でも。でも……。

「……ごめん、高広」

本当にごめん、高広。

今……私は気付いてしまった。

高広とこうしていても、ドキドキしない。

胸で何かが弾けるような、身体中からときめくような、そんなドキドキがしないんだ。

高広への気持ちは、恋じゃない。

私が恋してるのは、やっぱり……。

私はゆっくりと高広から身を起こした。

「ごめん、高広。私、高広とは付き合えない。私、篠宮さんが、」

「俺が、なに?」

後ろから低い声がして、グッと身体を引かれた。

「……!」

嘘でしょ?!

引っ張られて慌てて振り向くと、なんと源川コーポレーションの社長と篠宮さんが立っていた。