あなたにspark joy

……良かったと思おう。今の段階なら、このまま気持ちを封じ込めて何もなかった事に出来るもの。

さあ、仕事にいく支度を始めなきゃ。

佐伯さんに何を言われようが、仕事はちゃんとやりたい。

私はそのまま屈み込むと冷水で顔を洗った。

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徐々に気持ちの整理がついてきて、電車を降りる頃にはいつも通りの自分が出来上がっていた。

「おはようございます」

自動ドアを通過し、セキュリティーゲートの手前でガードマンに頭を下げると、私はバッグの中のカードを探した。

あれ、バッグの内ポケットに入れてるのに……。

昨日走った時にシャッフルしちゃったとか?参ったな……。

一旦ゲートから離れようとしたその時、

「俺も一応カード持ってるんだ。たまにこっちから入るから。どうぞ」

後ろから篠宮さんの声がして、私は身体を斜めにそらした。

ゲートにカードをかざす篠宮さんからフワリと爽やかな香りが漂い一瞬胸がギュッとしたけど、私は彼を見上げると唇だけで微笑んだ。

「カードが見当たらなくて。すみません。ありがとうございます」