会えるかどうかわからないけど、会いたい。

すごく会いたい。

篠宮さんの自宅の場所は覚えている。

私は最寄り駅で降りると足早に彼の家へと向かった。

時間も時間だし、顔を見たらすぐに帰ろう。

でも、会えたとしたら何て言おう。

夜に押し掛けた私を見て、彼に迷惑そうにされたら?

そしたら……偶然を装って……。

私は歩きながら少しだけ首を振った。

いや。……ごまかしたくない。顔が見たかったって、正直に言おう。

私は空を仰いで大きく深呼吸をすると、篠宮さんの家へと歩き続けた。

あの角を左に曲がると、見えてくる。

篠宮さんの住むマンションはエントランスの照明がとてもお洒落で、私には分からないけれど有名な建築家が手掛けたんじゃないだろうかと思ってしまうデザインだ。

手前から続く幻想的なオレンジ色の灯りが、私の胸を踊らせる。

会いたい。篠宮さんに。

ドキドキとはやる胸を押さえて、私はゆっくりとその角を曲がった。