あなたにspark joy

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帰り支度を始めていたとき、妹尾さんが電話をくれた。

心配そうな声が耳に流れ、私は頷きながら返事をし、足の具合を伝えた。

妹尾さん曰く、前田さんは朝イチで社長から厳重注意を受け、彼は今後一切私に近づかないと約束したそうだ。

……前田さんがその約束を守るかどうか分からないけれど、社長の耳に入ったことで少しは安心出来る。

つくづく、あの時篠宮さんが来てくれて良かったと思った。

私は妹尾さんにお礼を言って電話を切ると、皆に挨拶をしてから設計課を出た。

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自宅へつくと真っ先にシャワーを浴び、私はリビングのソファへと倒れ込んだ。

突っ伏して眼を閉じても、私を睨み付けた佐伯さんの顔が浮かぶ。

それから彼女に言った自分の言葉を思い出して、私は無意識に眉を寄せた。

『今後は仕事に私情をはさまないでください。篠宮さんと私は無関係です』

……確かに無関係だけれど……私は恋に落ちてしまった。

プライベートを持ち込まず業務に向き合えばいい話だけれど、単純には気持ちを片付けられない。

それは多分、佐伯さんの勘が当たっていたからだ。


『慶太が好きだって顔に書いてある』


佐伯さんの言葉通りだという事実が、私の心を乱して居心地が悪い。