あなたにspark joy

「高広が来たなら……安心だね。俺はもう帰るよ」

「……」

二度目のインターホンが鳴った。

「……真優?」

「うん、ちょっと待って、今開ける」

開けた玄関ドアから入る新しい空気。

私と篠宮さんを見て息を飲む高広の瞳。

「ちょっとトラブルが起きたんだ。……高広。あとは任せたから」

「……分かった」

篠宮さんは高広にこう言うと、私にじゃあ、と手を上げてドアの外に消えた。

「上がっていい?」

……嫌だった。

篠宮さんに誤解されたかも知れないのに、高広と二人でいたくなかった。

「ごめん。今日ね、最悪な目に遭って足を怪我しちゃったの。近くに篠宮さんがいて送ってもらったんだけど、もうヘトヘトで。悪いけど今日は無理」

高広を見上げて私がそう言うと、彼はジッと私を見下ろした。

「……ごめん、高広」

「……分かった。これ出張の土産。じゃあな」

手渡された袋を受け取り、私が頷いて高広を見ると、彼は少しだけ笑った。

「どうせだから、ケーニィ追いかけて飲みにでも行くわ」

「ん」

私は手を振って踵を返した高広の背中を見つめると小さく息をついた。

高広を見ているのに、私の胸は篠宮さんでいっぱいだった。