あなたにspark joy

これは篠宮さんの優しさなのだ。

湿布なら途中で買えたのに、足の痛みだけじゃなく様子のおかしい私を気遣って、真っ先に家に送ってくれたのだ。

私に、待ち時間を作らせないように。

胸が熱い。

好きという気持ちが、胸だけじゃなく全身に溢れる。

「じゃあ、後で」

「……はい」

熱いシャワーを思いきり浴びた。

メイクも落とし、唇が磨り減るくらい擦って洗った。

前田さんの顔が脳裏に焼き付いて忘れられない。

私はシャワーを浴びながら、声をあげて泣いた。

****

「はい。これでよし」

「ありがとうございます……」

恐ろしくテンションの低い私を、篠宮さんは黙って見つめた。

「もう少しいようか?それとも、ゆっくり休む?」

……帰ってほしくない。傍にいてほしい。

でもそんな事言えない。言えるわけがない。

「大丈夫です。お世話かけてすみません」

ポツンと呟くようにそう言うと、篠宮さんは唇を引き結んだ。

「……」

「……」

その時、私達の沈黙を終わらせるかのようにインターホンが鳴った。

パネルを見ると高広が写っていて、私はチラリと篠宮さんを見た。

……高広とヨリを戻したと思われているんじゃないだろうか。

……誤解されたくないという思いが湧き上がり、胸が苦しくなる。

篠宮さんはパネルを見た後、私を見つめた。