その時、公園の噴水がゆっくりとライトアップされた。

淡い光が吹き上がる水を彩り始めて、私は思わず足を止めた。

普段なら横目で見ながら通りすぎ、足を止めることもない。

なのにこの日に限って私は、フラフラと噴水に近づいた。

今まで気にしたことなどなかったけれど、噴水の際に立って下を見ると、水面がハイヒールの爪先間際まで迫っていた。

へえ、わりとギリギリまで水があるんだ……。

この綺麗な噴水を眺めたら、少しは腹立たしさが癒えるだろうか。

美しいものを見たら、さっきの出来事なんて取るに足らないワンシーンだと心が静まるだろうか。

その時急に声がした。

「送るって言っただろ。この公園の北側の出入り口は木で陰になってて、女性がたびたび襲われてるんだ。犯人はまだ捕まってない」

噴水の音で足音に気づかず、急に腕を掴まれた私は腕の主を振り返り、ビクッと反射的に仰け反った。

それと同時に、かくん、と左足に変な感覚が広がる。

あ、れ。

「危な……」

「きゃああっ」