あなたにspark joy

早く、早く拭きたい。

心臓が激しく脈打ち、身体が冷えていく感覚が全然治らない。

「逃げるなよ。俺に恥をかかせるな」

「っ……!!」

グイッと肩を掴まれて、ビクンと身体が跳ねた。

背後からぐぐもった前田さんの声がして、私は恐怖のあまり硬直した。

……逃げなきゃ。

その瞬間、ガクンと足首が内側に曲がり、私は地面に落ちるように両手と膝をついた。

誰か……助けて。助けて。

怖くて身体が震えて、もう声がでない。

「真優ちゃん!」

反射的に前を見ると、数メートル先に篠宮さんが見えた。

「篠宮……さん」

「真優ちゃん!」

駆け寄ってきた篠宮さんが、床に膝をついて私の顔を覗き込んだ。

「大丈夫か?」

大丈夫じゃない。怖い。

「ううっ……」

我慢できずに泣き声を上げた私を見て、篠宮さんの瞳が鋭く私の後方を見た。

「今、逃げていったアイツ……先週末、真優ちゃんの腕を掴んでた奴だよね?」

「……」

黙って頷くのが精一杯の私を、篠宮さんが優しく腕に囲った。