あなたにspark joy

酒臭い息と、唇に広がる前田さんの感覚。

キス、された。

キスされた!!

「あー、腹へったあ!」

「アイツらもう着いてるかな」

その時突然頭上から声がして、前田さんが私を離した。

無我夢中だった。

狭い階段はすれ違えないため、来たばかりの客が頭上で私を待っている。

泣き顔を見られるとか、そんなのはもうどうでもよかった。

一気に階段を駆け上がって来客の脇を抜けると、私は涙を拭って歩道へと飛び出した。

キスされた、前田さんに。

嫌だ、嫌だ!!

前田さんの異様な眼差しと唇の感覚が気持ち悪くてたまらない。

そうだ……拭かないと。

唇、拭かなきゃ!!

コンビニの手前で立ち止まると、私はバッグの中の除菌シートを探した。

信じられないくらい手が震えていて、そのせいなのか見つからない。